スイスというアウェイ
日本人にとって、海外生活はいわゆるアウェイでの環境となります。言葉や文化が違うため、国内と同じような主張や価値観が通らないことがあるばかりか、そもそも、現地の言葉が不自由であれば意思を明確に伝えることすら困難になります。
私がスイスの寄宿学校で過ごした1年余りの期間で、これを実感する瞬間が幾度となく訪れました。
こと欧米に限っていうと、日本や日本人のことを何か不思議な珍しいもののように考えている人たちがたくさんいるのです。
日本文化について尋ねられることがあっても、たいていの場合、それは表面的な好奇心からに過ぎず、欧米の風習と違っていると、彼らは、自分たちのほうが主流であって、あなたたちのやり方は「変わっている」と解釈しがちです。
たとえば、車が道路の右と左のどちらを走るか、という点で、日本とスイスでは逆になるようです。気心の知れたあるスイス人男性と話をしているとき、彼が冗談めかしてこう言いました。
「君たちがおかしいんだよ、車が左側を走るなんて。車は右って昔から決まってるんだ」でも、そう言うけど、確かイギリスも日本と同じ方式じゃないの、と返すと、「まあ、どっちも島国だからなあ」ときました。
このときは、お互い本気で議論していたわけではなかったのですが、なんとなく、スイス人の一般的な考え方を表しているような気がします。私に限らず、欧米の国にある程度の期間滞在した人は、多かれ少なかれ、同様の体験をしているのではないでしょうか。
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