アメリカンなアジア人

スイスの寄宿舎で会った日本人の中には、すっかりアメリカ人に同化してしまったような生徒さんもいました。当時16歳のYさんは10歳ぐらいからその学校にいたようで、純和風の顔立ちながら、その言動も服装もワイルドで日本人離れした感じでした。

スイスのカフェ

やはりアメリカンセクションに属していた彼女は英語のスラングを連発し、髪には奇抜な色のメッシュを入れていました。周囲の友人もアメリカ人が多かったようです。

将来はハーバードなどの有名私大に進学するのが目標だと話していた彼女には、もはや日本人としての面影はありませんでした。

Yさんのような人が、もし古い体質の日本企業などに入ったら適応できないのではないかという気がします。おそらく、本人もそのあたりはわきまえていて、最初から欧米での就職をめざしていたのかもしれません。

そのYさんよりももっと極端な例がありました。台湾出身で当時15歳ぐらいの少女です。アメリカ人の友人たちにとけこみたいという気持ちが強かったのか、彼女は、きちんとした英語を覚えるよりも先に、若者特有のはやり言葉をつなぎ合わせて話すようになってしまったのです。

いわゆる、“kind of”や “you know”(あえて訳すと、「て、ゆうか~」ぐらいかな?)を頻発し、やたら早口にまくしたてるのです。最初、その英語が聞き取れなかった私は、彼女が流暢すぎるからだと思っていたのですが、ネイティブの英語教師たちがこう言うのを聞いて驚きました。(とんでもないわ。ちゃんとした英語じゃないから何言ってんだかわからないのよ。)

やがて、その台湾人の女の子は、少し年上のイタリア系アメリカ人の女友達にあこがれ、なんでもかんでもその子のマネをするようになりました。美人でおしゃれなその友達と同じように、冬でもノースリーブのシャツを着たり、大胆なアクセサリーを身につけたりしました。

あげくのはてに、自分の名前まで、その友達に似せたイタリア風の別名に改名してしまったのです。公式の手続きをとったのかどうかは不明ですが、職員会議の場で、「本人の希望により、今日から名前が○○に変わりました」と発表されていたのは確かです。(なんじゃ、そりゃあ・・・)と周りがざわついていたのを覚えています。

Yさんにしても、台湾人の子にしても、身も心もアメリカンなアジア人としてふるまっているのですが、やはり、悲しいことに、本物のアメリカ人ほどカッコよくは見えませんでした。でも、なんでも欧米人にはかなわないのか、というと決してそうではなく、アジア人のほうがキマッていることもあるんですよね。

柔道の授業を見学したとき、その格好が一番サマになっていたのは、やはり日本人の男の子でした。たぶん、Yさんや台湾の女の子も着物や民族衣装を着たら似合っていたんじゃないかなあ。まあ、彼女たちはそんなのには興味なかったんでしょうけど・・・。

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