国内で出会った異文化の人たち
今回のコラムは時事ネタに絡めた異文化体験について。2005年にロンドンで起きた同時爆破テロの後で書いた過去のブログです。
それより以前、政府開発援助の技術通訳をしていた頃を振り返っています。
技術研修コースでは、通常、5~10人の研修員をひとりで受け持つことになりますが、
だいたい、その中に何名かイスラム教徒の人たちがいます。
クリスチャンや仏教徒に比べて私たちが彼らに気を遣うのは、イスラム教には厳しい戒律があるからです。
ムスリムの人たちは、毎日欠かさず決まった時刻に決まった方角へ向けてお祈りを行い、豚肉を食してはならない、などの食事制限を守ろうとします。
それらの慣習を研修期間中も続けられるよう手助けするのも私たちの役目です。
日本という異国で集団生活を行っている以上、すべて要望通りにいくわけではありませんが、
できる限りお互いの文化や風習を尊重し、ときには相手の立場を思いやって譲歩することで、信頼関係が生まれてくるのです。
ところが、先日ロンドンで起きたような宗教がらみのテロ事件が発生すると、ときには研修内容に暗い影を落とすこともあります。
今でもよく覚えているのは、あの2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロによる影響です。
当時、私はある研修コースの引率で稼動している最中で、事件当日は東京方面への研修旅行中でした。
夜、横浜のホテルでテレビのニュースを見て愕然としたのを覚えています。
翌朝から、研修員の間でもこの話で持ちきりでした。
5人の研修員のうちふたりはムスリムでしたが、彼らも同様に事件を嘆き悲しんでいました。
しかし、ある意味で、この事件は彼らにとって他人ごとでは済みませんでした。
というのも、今まで毎年のように研修を受け入れてきた見学先の企業や研究室の一部が、これ以降、外国人研修員、とりわけ、イスラム教徒の存在に過敏に反応するようになったからです。
「安全上の懸念から」という理由で見学自体を断られたこともありますし、研修日程を著しく削られたこともあります。
また、研修員の素性をはっきりさせるよう、顔写真入りの詳細な経歴を見せてほしい、という要請を受けたこともあります。
そのたびに、彼らの気持ちを傷つけることのないよう、ときには当たり障りのない口実を使いながら、研修内容の変更を説明せねばなりませんでした。
このことは、今も苦い思い出として心に残っています。
今回、ロンドンで起きた同時爆破テロによって、日本にいる研修員のみならず、世界各国の多くの善良なムスリムの人たちが無用の被害に遭わないことを心から祈りたい気持ちです。
当時は、ISIS(イスラム国)などが出現するずっと前でしたが、こうした誤解が日本国内で生じていたと思うと心が痛みます。
「今はその頃より状況が良くなった」とはいえないところが残念ですね・・・。
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