日本文化を英語で完璧に説明する方法

「日本事象」はひとつの立派な専門分野

今回は、少し前に取り上げた「日本文化を英語で簡単に説明する方法」の応用編です。

あなたは、例えば外国人から「茶碗蒸し」や「すきやき」について “What is that?” と質問されて、とっさに英語で説明できますか。

「即興ですらすら回答できます」という方は、経験豊富なプロ通訳ガイドか、日本的事象に造形が深くて英語の堪能な人ではないでしょうか。

通常は、英語を流暢に話せても、日本的事象を誰でもすらすら解説できるものではありません。

個人的には、日本的事象の説明は、「時事問題の意見発表よりも難易度が高い」と感じています。

理由は、そもそも「日本文化・日本的事象」について、詳しい由来や正確な定義を学ぶ機会がないからです。


日本人で「正月」や「千羽鶴」の意味を知らない人はいませんから、日常生活で、わざわざ噛み砕いて説明する必要がないですよね?

このため、実は「日本的事象」を日本語でも明確に定義できない場合が多いのです。

「日本的事象を説明する」というのは、いわばひとつの立派な専門分野です。

日本語でも考えたことのない物事の説明を、英語でスラスラとできなくて当然です。

外国人に不意に質問されて、とっさに説明できなくても落ち込む必要はありません。

プロ通訳ガイドも入念に準備して本番に臨む

広島の厳島神社

では、「外国人のお客様に日本的事象を説明する必要がある人」はどうすればよいでしょうか。

当然ながら、知らないものは説明できませんから、事前準備をするしか道はありません。

ただし、自分でゼロから説明を考えるのは負担が大きいので、優秀なネタ本を有効に使いましょう。

つまり、ネタ本の英語説明を覚えればいいのですが、何も全項目を丸暗記する必要はありません。

どんな事象の解説が必要になるのか事前に予想できますから、対応した項目だけに絞ればいいのです。

プロ通訳ガイドの人たちも、毎回、観光案内する場所を下調べして、説明文を覚えるなど入念に準備しています。

定番は「日本的事象英文説明300選」

「日本的事象300選」

ネタ本の定番はやはり、通訳ガイド試験の虎の巻ともいうべき「日本的事象英文説明300選」ですね。

通訳ガイド受験生でこれを知らない人はいないのでは、というぐらい有名な本です。

私もそのひとりですが、本棚を探したら、まだありました(←左の写真)!

当時の定価は1,000円(税別)、発行所は「ハローインターナショナル」です。

まえがきには「日本的事象の重要項目300を12のジャンルに分類・整理して収録した」「丸暗記決定版」と記載されています。

Unit 1: Geography and History

Climate in Japan(日本の気候) Tsuyu(梅雨) Taifu(台風)

Unit 2: Sightseeing

Shinkansen(新幹線) Ryokan(旅館)  Minshuku(民宿)

Unit2: Sightseeing

こんな感じで、12ジャンルに区分けした日本的事象が、3〜7行の平易な英文で説明されています。

私は通訳ガイド資格を取ることを1998年の4月に決意し、この本の発行元の予備校で、一次の筆記対策を開始しました。

3ヶ月後の試験になんとか間に合わせるため、「300選」を集中的に1つずつ暗記するのを日課としたものです。

改めて本を開くと、赤ペンの書き込みがぎっしり!たぶん、前置詞や冠詞の読み方に注意していたのでしょう。

久々に読み返すと、通訳ガイド試験のバイブルと呼ばれるにふさわしく、非常に内容が濃いです!

例えば、冒頭で例に挙げた「すきやき」の解説はこうです。

Sukiyaki

Sukiyaki is a dish of thinly sliced beef, onions, tofu, and shiitake mushrooms cooked in a pan at the table. Sugar, soy sauce, andd sake are added for flavor.

実に簡潔でわかりやすいですね。説明の長さも適切です。英語でここまで説明できたら、十分でしょう。

余談ながら、この「すきやき」には逸話があり、かつて、通訳ガイドの一次筆記試験で出題されたそうです。

おかげで、多くの受験生が暗記した通りの英文を書いて高得点をマークし、一次試験の合格率が跳ね上がったとか。

(ガイド予備校・名物講師の証言より)

いや、この年の筆記試験の採点官、答案を見てて、さぞ気味悪かったでしょうね〜。

答案をめくってもめくっても、「Sukiyaki is a dish of thinly sliced beef, onions, …」って、全く同じ英文が延々と続くんやから。

でも「すきやき」の説明はそれで合っとるわけやし、まさか、不正解にするわけにはいかんしな。

「300選」で学習した受験生の皆さん、この年は本当にラッキーでしたね。

肝心の本の入手法ですが、Amazonで検索すると、「日本的事象英文説明300選―通訳案内士国家試験に出るがヒットしました。

定価3900円で以前より割高になっていますが、購入者のレビューを読むと、DVDなどいろいろ特典が付いてくるようです。

これから通訳ガイド試験を受験する人なら、このセットで対策するのもありですね。

ただ、他にも類書があるため、日本的事象を説明する必要がある人、興味のある人は、どれかお好みのものを一冊選んで活用されてはいかがでしょうか。

日本的事象の解説本でパターンをつかんで応用!

金沢城

日本的事象の解説本が手元にあれば、その英語説明を読む過程で、(そうだったのか)(こんなふうに説明すれば良いのか)という発見があります。

さらに、一冊分の説明をだいたい覚える頃には、「説明の仕方のパターン」がつかめるようになります。

先日の学習コラムのコメント欄で、読者のSunflowerさんが非常にありがたい事例をご紹介くださっています。

私も少しだけ、ボランティア通訳として、海外からのお客様をガイドしたことがあります。

その研修で、先輩ガイドが「百万石」(金沢では、今でも「百万石」と商品やイベントにネーミングしたがる)をとてもうまく説明されていました。こんな感じです。

In the feudal age, Japan was divided into many countries and regions. The wealth of each region was calculated by the amount of rice they produced.

一石 of rice can feed 1 person a year. So, one million 石 of rice was huge!!! That’s why The Tokugawa shogunate carefully watched over Kanazawa.

海外の方の文化や背景からイメージできる情報を提供してあげるのも、大事なのだなあ、と感じました。

まさに、英語力プラス心遣いなのでしょうね。

この先輩ガイドさんのように、日本的事象を自分の言葉で上手に説明できたら最高ですね。

まさに、模範的な応用例だと思います。

お勧めは、それぞれの事象を「ただ機械的に暗記する」のではなく、「内容を味わい、状況を思い浮かべながら覚えていく」方法です。

そうすることで早く身につき、もし暗記した英文を忘れても、自分の言葉で言い換えることができるようになります。


以上、日本事象の詳しい説明方法について、ひとつの考え方と参考図書をご紹介しました。

ご意見、ご感想がありましたら、ぜひコメント欄からお聞かせください。

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日本文化を英語で完璧に説明する方法”へ2件のコメント

  1. sunflower より:

    「300選」??聞き覚えがある、と思い探してみたら、本棚から出てきました!「すき焼き」同じ説明です~!!

    私もガイド試験のためにハローに通っていたことがあります。(名物講師には出会えなくて残念。。。)

    試験のために暗記した文例はほとんど忘れてしまっていますが…自分の言葉で言えるようになるとよいですね。

  2. Misha より:

    「説明の仕方のパターンを習得し、あとは自分の言葉で応用できるようにする」のは本当に大事だと私も思います!「300選」を機械的に丸覚えしたのはいいけど、緊張して途中で忘れてしまい、また最初から始めないと文が出てこないという気の毒な方が結構いました。Sukiyaki is a dish of thinly sliced beef, onions, tofu…を繰り返す。他人事とは思えず手に汗かいたのを思い出しました。

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