ガザ出身医師「それでも私は憎まない」【A Doctor from Gaza: “I Shall Not Hate”】

【中級脱出のリスニング特訓!】Topicの背景

先日、報道ステーションの特集でガザ出身のアブラエーシュ博士の壮絶な体験を知り、衝撃を受けました。

博士のドキュメンタリー映画が公開されましたが、なんだか予告編を見るだけで泣けてきます。

娘たちを殺されても平和と共存を信じる- この崇高な信念を聞くとつらいです。

戦争をやめようとしないイスラエルのネタニヤフ政権は、博士にどう釈明するつもりでしょうか。

今回は、このテーマに関する英語ニュースをお届けします。

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Step1:全体リスニング

まずは英語ニュース全体の要点を理解するリスニング訓練です。

次の各質問の答えを探しながら聞きましょう。

Q1 : Who is the main person in the documentary I Shall Not Hate?

Q2 : What happened to the doctor’s family in 2009?

Q3 : How did the doctor respond to this tragedy?

1回目で答えがわからないときは、最大3回まで音声を再生しましょう

【ナチュラルスピード】

英文

A Doctor from Gaza: “I Shall Not Hate”


The movie “I Shall Not Hate” is a documentary about a Palestinian doctor’s life.

He grew up in a poor area of Gaza and worked hard to become a doctor.

Believing in peace and coexistence, he decided to work at an Israeli hospital.

In 2009, an Israeli tank shelled his Gaza home, killing his daughters.

The doctor’s desperate cries over the phone were broadcast live on Israeli TV.

Even so, he didn’t give in to hatred, and his belief moved many people.

和訳

ガザ出身医師「それでも私は憎まない」


映画『私は憎まない(I shall not hate)』は、パレスチナ人の医師を描いたドキュメンタリーである。

ガザの貧困地域で育った彼は、勉学に励んで医師となった。

平和と共存を信じ、彼はイスラエルの病院へ出勤する道を選んだ。

2009年、彼の自宅がイスラエル軍の砲撃を受け、娘たちが殺された。

電話口で取り乱す医師の叫びが、イスラエルのテレビで生放送された。

それでも彼は憎しみにとらわれず、彼の信念が多くの人々の心を動かした。

質問の解答例

Q1: Who is the main person in the documentary I Shall Not Hate?
A1: A Palestinian doctor from Gaza.

Q2: What happened to the doctor’s family in 2009?
A2: An Israeli tank shelled his home, killing his daughters.

Q3: How did the doctor respond to this tragedy?
A3: He didn’t give in to hatred (and continued to call for peace and coexistence).

Step2:重要単語と語句

音声を再生し、強勢のある母音(=大きな赤文字)を意識しながら次の手順で練習しましょう。

①「単語の綴りと意味」を見ながら音声をリピートし、意味を確認。

②「単語の綴りと意味」を閉じて音声をリピートし、一時停止して和訳。

単語の綴りと意味

Palestinian /ˌpælɪˈstɪniən/ (形・名)パレスチナの、パレスチナ人

Gaza /ˈɡɑːzə/ (名)ガザ(パレスチナ自治区の都市)

coexistence /ˌkoʊɪɡˈzɪstəns/ (名)共存

Israeli /ɪzˈreɪli/ (形・名)イスラエルの、イスラエル人

tank /tæŋk/ (名)戦車

shell /ʃɛl/ (動)砲撃する、(名)砲弾

hatred /ˈheɪtrɪd/ (名)憎しみ、嫌悪

Step3:リッスン&リピート

1文ずつ区切ったスロー音声を再生し、文字を見ずにリピートしましょう。最大3回まで音声を流してOKです。

できれば、リピートした直後に英文をディクテーション(書き取り)してみましょう。

次に英文を確認し、リピートやディクテーションを間違っていた箇所がないか確認してください。

今度は「母音のストレス・音の連結・止める子音」などの発音ルールに気をつけて音声を再生し、文字を見ながらゆっくり正確に2〜5回リピートしましょう。

その後、文字を見ないで2回正確にリピートできたらOKです。

▶和訳を見る前に、理解度クイズにもぜひ挑戦してください。

なお、英文のスラッシュはStep4の和訳用です。音読のときは、スラッシュで区切らず一文を一気に読み上げてください。

Step4:サイトトランスレーション(スラッシュ和訳)

スラッシュで区切った英文を表示し、区切りごとに日本語に訳します。後ろから返り読みせず、英語の語順のまま読み進めてください

この訳し方を「サイト・トランスレーション」といいます。英語の語順のまま理解する習慣がつくと、英文を読むスピードが格段に速くなります。

まず自分で訳してから和訳例と比較してみましょう。意味が違っていた箇所は、語彙と文法構造を確認し、間違った原因を明らかにする必要があります。

Step5:反訳トレーニング(和文英訳)

今度は、和訳のみを見ながら元の英文を口頭で再現する「反訳トレーニング」に挑戦しましょう。

その際、英文テキストと全く同じでなくても、意味がほぼ同じで文法的にも正しければOKです。

余力があれば、単語の一部を入れ替える「パラフレーズ」練習もやってみましょう。

1)

スラッシュ英文

大きな赤い文字:強勢(=アクセント)のある母音

下線:音の連結 ( ):子音の脱落  ■t,d,k,g,p,b:子音の飲み込み

The movie “I Shall Not Hate” / is a documentary / about a Palestinian doctor’s life.

スラッシュ和訳

映画『私は憎まない』は、ドキュメンタリーである、パレスチナ人の医師を描いた。

⇒ 映画『私は憎まない』は、パレスチナ人の医師を描いたドキュメンタリーである。

2)

スラッシュ英文

大きな赤い文字:強勢(=アクセント)のある母音

下線:音の連結 ( ):子音の脱落  ■t,d,k,g,p,b:子音の飲み込み

He grew up / in a poor area of Gaza / and worked hard / to become a doctor.

スラッシュ和訳

彼は育った、貧困地区のガザで、そして勉学に励み、医師となった。

⇒ ガザの貧困地域で育った彼は、勉学に励んで医師となった。

3)

スラッシュ英文

Believing in peace and coexistence, / he decided to work / at an Israeli hospital.

スラッシュ和訳

平和と共存を信じ、彼は働くことを決意した、イスラエルの病院で。

⇒ 平和と共存を信じ、彼はイスラエルの病院へ出勤する道を選んだ。

4)

スラッシュ英文

In 2009[two thousand nine], / an Israeli tank / shelled (h)is Gaza home, / killing his daughters.

スラッシュ和訳

2009年、イスラエルの戦車が、彼の自宅を砲撃し、彼の娘たちを殺した。

⇒ 2009年、イスラエル軍の戦車が彼の自宅を砲撃し、娘たちを殺害した。

5)

スラッシュ英文

The doctor’s desperate cries / over the phone / were broadcast live / on Israeli TV.

スラッシュ和訳

医師の悲痛な叫びが、電話口での、生放送された、イスラエルのテレビで。

⇒ 電話口で取り乱す医師の叫びが、イスラエルのテレビで生放送された。

6)

スラッシュ英文

Even so, / he didn’t give in to hatred, / and his belief moved many people.

スラッシュ和訳

それでも、彼は憎しみにとらわれなかった、そして、彼の信念が多くの人々の心を動かした。

⇒ それでも彼は憎しみにとらわれず、彼の信念が多くの人々の心を動かした。

Step6:オーバーラッピング&シャドーイング

【スロースピード】

英文

A Doctor from Gaza: “I Shall Not Hate”


The movie I Shall Not Hate is a documentary about a Palestinian doctor’s life.

He grew up in a poor area of Gaza and worked hard to become a doctor.

Believing in peace and coexistence, he decided to work at an Israeli hospital.

In 2009, an Israeli tank shelled his Gaza home, killing his daughters.

The doctor’s desperate cries over the phone were broadcast live on Israeli TV.

Even so, he didn’t give in to hatred, and his belief moved many people.

上記の英文を表示しながらスロースピードの音声を通しで再生し、自分の声をかぶせてオーバーラッピングします。回数の目安は5回です。

余力があれば、次に英文を閉じて音声を再生し、1,2語遅れで追いかけるシャドーイングに挑戦しましょう。こちらも5回を目安にしてください。

Step7: 仕上げの全体リスニング

【ナチュラルスピード】

最後に、英文を見ない状態でナチュラル・スピードの英語ニュースを通しでもう一度聞いて仕上げましょう

途中、聞き取りにくい箇所があったら前のStepに戻って内容を確認してくださいね。

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ここからはメルマガ企画「穴埋めディクテーション」の正解と解説・成績優秀者の発表です。

上記の英語ニュースを公開する前に、メルマガ読者さんを対象に以下の要領で英文のディクテーションQuizを出題しました。

現在の英語力を語彙力・文法読解・発音力の点から客観的に測定する作業」です。英語ニュースの音声を聞き、各空欄に入る英文を正確に書き取ってください。

空欄に入る箇所は、途中で止めずに一気に聞かないと訓練の効果がありません。また、聞く回数はできれば2回以下、最大5回程度を目安にしてください。

5回聞いてわからない箇所は「今の英語力では正確に聞き取れない箇所」です。そこを自分の弱点だと理解し、解答を見て原因を分析するのが上達の近道です。

>> 答案採点のチェックポイント

メルマガ企画「穴埋めディクテーションQuiz」答案と成績発表

メルマガ読者の皆様、答案ご提出とコメントありがとうございました!詳細は上記リンクをクリックするとご覧になれます。

満点(リスニング回数「2回以内」の条件付)の割合と各設問の正答率
満点率 Q1の正答率 Q2の正答率 Q3の正答率
19% 45% 62% 35%

※各設問の正解率はリスニング回数を反映しておらず、3回以上聞いた場合も含まれています。

▶最優秀賞(100点):15名

ディクテーション答案の講評

今週のディクテーションQuizは難易度が低かったため、20%弱の人が満点でした。

固有名詞の形容詞「Palestinian」と「Israeli」を理解できたかどうかがポイントです。

いずれもこのTopicのキーワードなので、背景知識があれば容易に聞き取れる単語です。

この点を含め、各設問のポイントをまとめましたので詳細は下記をご覧ください。

設問1)The movie “I Shall Not Hate” (           ) doctor’s life.

正解と答案分析

The movie “I Shall Not Hate” (is a documentary about a Palestinian) doctor’s life.

主な不正解事例)

▶「a documentary」を「the documentary」と定冠詞にしてしまった。

⇒ 本文中に初めて登場する事柄なので、「あるドキュメンタリー」と不定冠詞にするのが自然です。

いきなり「そのドキュメンタリー」と特定しても、読者には「どのドキュメンタリー」なのかわかりません。

設問2)(              ) of Gaza and worked hard to become a doctor.

正解と答案分析

(He grew up in a poor area) of Gaza and worked hard to become a doctor.

主な不正解事例)

▶ 「in a」を聞き取れず省略してしまった。

⇒ 弱音の機能語(前置詞や冠詞)は聞き取りが難しい箇所ですが、中級程度の文法力と読解力があれば簡単にわかります。

設問3)Believing in peace and coexistence, (              ).

正解と答案分析

Believing in peace and coexistence, (he decided to work at an Israeli hospital).

主な不正解事例)

▶ 「at an Israeli hospital」を「in an Israeli hospital」と書いてしまった。

⇒ 「at」は「特定の場所」を点のイメージで示しており、「勤務先」を表すにはこちらが自然です。

in」は「場所の中にいる状態」を示す前置詞で、「物理的な位置」を強調する表現です。

いかがでしたか。不正解箇所のある人は、間違えた原因をしっかり分析して今後につなげましょう。

次回のディクテーションQuizもふるってご参加ください。

参考動画:「やさしい英語ニュース」YouTubeチャンネルより

2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲をきっかけにますます泥沼化した中東情勢。

日本人にとって複雑なパレスチナ問題を整理するため、当時、授業用に作成した英語ナレーション・シリーズです。

このTopicに関するディスカッション用の質問と解答例

ガザ出身医師「それでも私は憎まない」:Q&A

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